Arancione Fenice’s diary

趣味、いろいろ。日常、いろいろ。

TEAC AI-503レビュー

我が家の家族のためのアンプ。

AP-505なんかのアンバーな色のメーターよりこちらがモダンで好き

■筐体の大きさ

小さくて高品質で緻密なものが好きという日本人的感性に刺さる。もちろん私もその感性を持っていると自認している。

TEACのリファレンスシリーズは501系からスタート。初期の頃はオーディオ好きのサブ機、デスクトップオーディオ、ヘッドホンユーザがターゲットだったのだろうか。そこから503系、505系へ行くに従って段々マニアックな路線が強化されてオーディオ好きのサブ機じゃなくてメイン機になり得るレベルにまで到達。

日本の住宅事情ではTVが液晶となり厚みがブラウン管時代からすると激薄に。するとリビングを始めとするTVの設置を想定する壁面収納や家具調度品類のサイズが変わってきた。

フルサイズのオーディオ機器、それも上位機種というのはもはやオーディオルームにしか居場所がないと言って良いだろう。リビングルームに設置スペースはない。一般的な住宅では最も広いスペースはリビングルームだろう。既製品のマンションや戸建にはフルサイズのオーディオ機器を設置することはもはや考慮されてないのではないか?

とことん音質を重視すると大きくて重い、物量投入型が正解なのかもしれないし、日本のオーディオユーザーがそうした機器を好んでいた。

我が家にある造作されたTVボード、壁面収納、IKEAのキャビネット、通販で買ったベトナム製のキャビネットも奥行きは45センチくらいだ。主要な国内オーディオブランドの上位プリメインアンプのサイズは幅は44センチくらいで奥行きは45から50センチもある。高さだって15センチ以上。オーディオ機器というのは背面に各種ケーブル類を挿すので奥行き5cmから10cmくらいのスペースが追加で必要になる。専用のオーディオラックに設置することが前提で一般的な収納家具に設置することは考慮されてないのだろう。マニアに言わせればそんなの当たり前だと言われそうだが。

 

■デザイン

メーターは好きだけれど、音質にとってはメリットがないのでなくても構わない。とは言いつつも所有機器の中で1台くらいはメーター付きのアンプがあっても良いかなって思ってる。曲を聴きながらゆらゆら揺れるメーターを眺めるのが楽しい。海苔波形の曲だと針がほとんど揺れないってことも分かるし。

特徴的な取手はなくて良いとは思うけれど筐体側面の剛性確保には効果があるように思うし、デザインのアイデンティティとして悪くないと思う。701シリーズの取手はカッコ悪いけど。

ソースセレクタのダイヤルとLEDインジケーターが素敵。LEDパネルにソースの文字列を表示させるものが多いが、LEDパネルは常時点灯すると劣化していき表示にムラが出たりするし、故障するかもしれないし。AI-503のようなインジケーターが良い。LEDが点灯しなくなったらLED交換で済みそうだし。

 

■操作系

ボリュームダイヤルも削り出し加工で回転感覚も良好。クルクル際限なく回るロータリーエンコーダー式ではなくて、Min/Maxでダイヤルが止まる方式。この方式でリモコンでボリュームを操作しようとするとモーターでボリュームダイヤルをぐるぐる回さなくてはならなず、その接点があるためにダイヤルを回転させた時の感触が悪くなるのが多いがAI-503のは悪くない感触だ。

電源のトグルスイッチを操作するとカションという心地よい音がする。ソースダイヤルも節度感があるし、Bluetoothでペアリングするときはこのダイヤルを押し込むのだが、その操作感も良好。

 

■入出力関連

光、同軸、USB-B、Bluetoothのデジタル入力とアンバランスアナログ入力がある。デジタル入力メインの使い方が想定されていて現代的。

2chのステレオ出力。ヘッドホン端子付き。DAC内蔵。MQA以外で一般的に流通しているデジタル音源は全て網羅している。

 

■音質

カタログにはICE PowerのD級アンプモジュールを使っているとある。確かに高域はD級アンプの音色を感じる。ただし比較試聴しないと分からない程度だと思う。それと引き換えに音の立ち上がりがハイスピードで良好なトランジェント特性を獲得している。私はトランジェント特性をかなり重視する。打楽器や弦を弾く音のリアリティが良くなって臨場感が増すからだ。ドラムは打楽器だし、ベース、ギター、ピアノは弦を弾いて音を出す。トランジェントの良いとこれらの音色の臨場感が増すのだ。

SoulnoteやFundamentalのアンプもトランジェント特性、スピード感を重視していると聞く。どちらも聴いた事ないけど。アンプでは無帰還、DACではNOSモードというのが効くらしい。

低域は膨らまずタイトな感じ。量感は少なめ。中域は付帯音が少なくスッキリとした見通しの良い、アッサリとした音。オーディオマニアにはこうした音に物足りなさを感じる人が多いのかD級アンプはオーディオマニアに人気がない。D級アンプに力を入れているのはもはやTEACくらいなものだ。マランツはD級路線を続けるかどうか検討中なのではないかと予想。小さいところではSPECやNMODEも頑張っているがD級アンプは劣勢が否めない。ESOTERICはI-03/I-05を最後にD級アンプの開発を諦めたようだ。ONKYOはA-1VLでD級路線を始めるも途中でAB級にシフトしたりしているうちに経営破綻。パイオニアも経営破綻。ただパイオニア出身者がSPECというD級アンプのメーカーを立ち上げている。DENONもデジアンをやめてしまったみたいだし、マランツはPM-10/12の不人気に困ってAB級アンプに回帰しそうな雰囲気。

音の輪郭はしっかりしていて小音量でもその傾向。分析的に聴くと細かい音をそれほど分離して聴かせるタイプというわけでもなさそう。ここは価格なり。

D級は位相特性良好だそうで確かに空間表現は良いと思う。

パワーのスペックは低いが不足を感じないし、同じようなスペックのAB級とは比較にならないほど強力にスピーカーを駆動しているのが分かる。DENONのミニコンポ、DRA-F102とは全然違う。

同一条件で比較したわけではないがマランツPM-12の方が駆動力、静動力がある印象。要は音の抑揚がより精密に制御される感じなのだ。ただスピード感は負けてない。スパッと音が気持ち良く立ち上がる。

高域のD級っぽさはピュアオーディオ用アンプでD級が登場した頃のものと比較すると改善されているのではないかと思う。オーディオ用のアンプは大幅な進歩が見込めない成熟製品と言われているが、D級アンプの高域フィルター制御についてはまだまだ進化の途上にあるようだ。高域特性が優れていると評判のNCOREを搭載したPM-12でもAB級アンプとは音色が違うのが比較試聴すると分かる(比較しないと分からないかも)。

アコースティックな楽器の音色をできるだけ忠実に再現して楽しみたいなら、音色ではAB級が、トランジェントならD級が良いと思う。クラシック以外のジャンルのコンサートやライブはヴォーカルも楽器もPAで増幅した音を聴くことになるわけで、PAはD級増幅。